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英文ビジネスレター作成のためのガイドライン

(3/3)



 
2.9.8  文書主題 (subject line)  . . . 111
    a)  文書主題行の位置と書き方 . . . 111 
    b)  文書主題が複数行にわたる場合 . . . 113 
    c)   Re: の意味と使い方 . . . 114
    d)  文書主題のつけかた . . . 114
2.9.9  レター本文 (letter body) . . . 116
2.9.10 結尾敬辞 (complimentary close) . . . 117
    a)  結尾敬辞の種類と使い分け . . . 119
    b)  冒頭敬辞と結尾敬辞の組み合わせ . . . 123
2.9.11 署名欄 (signature block) . . . 124
    a)  ファクスレターの署名 . . . 126
    b)  署名欄での企業・団体名の記載 . . . 126
    c)  署名欄に記入する会社名が長い場合 . . . 127
    d)  署名者が女性であることを明記する場合の書式 . . . 129
    e)  肩書きがない場合の署名欄の書式 . . . 129
    f)  署名権限と代理署名(フォア・サイン)の方法 . . . 129
    g)  for and on behalf of の意味と使い方 . . . 131
    h)  連名署名の方法 . . . 132
    i)  相手の確認サインを求める場合の書式 . . . 133 
    j)  サインの書き方と実例 . . . 135 
    k)  署名者肩書について(英語で「肩書き」をどう表わすか). . . 138
    l)  企業各部門名の英訳例 . . . 141 
    m)  電子メールでの「署名」. . . 142
2.9.12 通信責任者識別イニシャル (identification initials) . . . 142
    a)  Blind ID initialsの使い方(署名者とレター起草者が違う場合). . . 143
    b)  ID initialsとReference line の混用 . . . 144
    c)  文例番号の記入(フォームレターを使う場合). . . 145
2.9.13 同封物注記 (enclosure notation) . . . 146
2.9.14 写し送付注記 (carbon copy notation) . . . 148
    a)  Blind carbon copy (bcc) について . . . 149
2.9.15 追伸 (postscript) . . . 151
    a)  Postscriptの戦略的な使い方 . . . 151
2.9.16  2ページ目以下のレターヘディングの書き方 . . . 154
    a)  ページ番号の書き方 . . . 155
    b) 「次ページへ続く」の書き方 . . . 156
2.9.17  レターが2ページ以上にわたる場合のページ分けの方法 . . . 157



 
2.9.8  文書主題(subject line) 
 文書主題はその文書の主題を簡潔に表現したものである。日頃、多数のレターを処理しなければならない立場にある者にとって、文書主題の明記されたレターはいろいろな意味で大いに助かるものである。たとえば、文書主題が明示されているレターは一見してその手紙の全体像、またはフレームワークがわかるため、心理的に入りやすく、多少なりとも「読む気」が刺激される。いうまでもなく、ビジネスレターは相手に読んでもらえなければ意味がない。読んでもらうためには、まず「読む気」を起こしてもらう必要がある。文書主題はそのための eye catcher としても有効である。したがって、文書主題はなるべく短く、要を得たものでなければならない。できれば数ワードの簡潔なものがよい。必要以上に長いものはかえって逆効果である。
  また、各レターの主題を明確にすることによって、論旨のはっきりしない文章になるのを防げるという効用もある。これは、one letter, one subject(1文書1件)のビジネスレターの原則を守るためにも有効である。さらに、適切な文書主題は文書管理あるいは文書検索の効率化という点でも重要な役割を果たす。たとえば、多くのファイルの中からある特定の文書を探し出したいといったケースでは、それぞれの文書に記されている文書主題が有効な手がかりとなる。いずれにせよ、すべてのレターに簡潔かつ適切な文書主題を加える習慣はぜひとも取り入れたいものである。

a)  文書主題行の位置と書き方
  文書主題行の位置とその書き方にはいろいろなパターンがある。セミブロックおよびインデントフォームのレターでは次のような中央配置方式が最も一般的である。この例では Quotation for PC-56 という3語からなる文書主題を、冒頭敬辞からダブルスペースの間隔をあけてレター中央部に配置し、かつアンダーラインを加えている(なお、ビジネスレターでは原則として各要素間のスペースはダブルスペースとするが、これは各要素間の区切りを明確にするためである。この例のように行位置がずれている場合には要素間の区切りは明らかであり、したがってシングルスペースでも差し支えない)。
 

 Figure 74: 文書主題の書き方1(中央配置方式)

  この例では文書主題行に含まれる品名・書類名・固有名詞などの重要な語の頭だけを大文字とする書き方をとっているが、次の例のようにすべて大文字で表記することもある。この場合にはアンダーラインを加えないことが多い。これは、大文字表記によってすでに十分に強調されているからである。
 

 Figure 75: 文書主題の書き方2(大文字表記、中央配置例)

  なお、文書主題と冒頭敬辞の前後関係については次のようなふたつの考え方がある。

  1) 文書主題を「本文」の一部と考えた場合には、冒頭敬辞の後(下)に配置する。
  2) 文書主題を「前付け」の一部と考えた場合には、冒頭敬辞の前(上)に配置する。

  上記のふたつの例ではいずれも文書主題が冒頭敬辞の後(下)に配置されている。これは文書主題を本文の一部と考えているわけである。 2) の考え方をとる場合には文書主題行の先頭に Subject: あるいは Re: のようなヘディングを加え、これをひとつの項目として立てることが多い(Reについては次ページの解説参照)。一般にはセミブロックおよびインデントフォームのレターでは前者の考え方をとり、フルブロックフォームおよびメモランダムでは後者の考え方をとる。フルブロック方式による表記例は以下のとおり。アンダーラインは強調のためであるが、これはオプションと考えてよい。
 

 Figure 76: 文書主題の書き方3(フルブロック表記)

b)  文書主題が複数行にわたる場合
 文書主題が複数行にわたる場合、セミブロックまたはインデントフォームのレターでは次の例のように各行ともレター用紙の中央位置(センターライン)にそろえて配置し、アンダーラインは最終行にのみ加える。これもすべて大文字で表記することがあるが、複数行の英文を大文字のみで表記するとかなり読みにくくなる。
 

 Figure 77: 複数行にわたる文書主題の書き方1(センタリング方式)

   フルブロックフォームのレターでは Subject: (または Re:)というヘディングの書き出しを左マージンにそろえ、コロンの後に1文字ないし2文字分のスペースを置いて1行目を書き始める。2行目以下の書き出し位置は1行目の書き出し位置にそろえるのが一般的であるが、特定宛名の項でも解説したように、項目ヘディングから2文字分インデントした位置にそろえることもある(p. 102参照)。
 

 Figure 78: 複数行にわたる文書主題の書き方(左寄せ方式)

c)  Re: の意味と使い方
  レターフォーマットにかかわらず、次のように文書主題の前に Subject: や Re: といったヘディングを加えることがある。

  1)  Subject: Quotation for PC-56
  2)  Re: Quotation for PC-56

  1) のSubjectはもちろん「主題(題目)」という意味である。2) の Re [ri:] は、もともとラテン語の res [ri:z] (= thing, matter, object, or the subject matter of a suit) という語からの借入語で、「…(の件)に関して」(in the matter of; in the case of; in reference to; concerning) という意味の前置詞である。たまたまこれが英語のregardingあるいは referenceとほぼ同じ意味であることからRe をその略語だと考えている人も多いが、上述のように Re はそれ自体でひとつの単語である。したがって、省略を示すピリオド (Re.) を加えない。また、Reは前置詞であるから、厳密に言えば Re Quotation for PC-56 のようにコロンなしで使うのが正用法である。ただし、一般には上例 2) のようにコロンを加えることが多い。これは、Subject: Quotation for PC-56の場合と同じように、ひとつの項目を立てていると考えるためである。[40]

  [40] ちなみに、このコロンは「つまり」という意味で、その後に内容を説明する語句が続く。関連解説はp. 101の脚注43参照

  なお、B.M. Miller (Legal Secretary's Complete Handbook. Prentice-Hall, 1972) によれば、re は法律文書などに頻繁に現れ、たとえば James v. Jones, (in) re estate of Williams.(ジェームズ対ジョーンズ、ウィリアムズの財産に関して)のような形で使われるとある 。このように、re はおもに法律用語として使われるものであるが、通常のビジネスレターでもかなり頻繁に使われている。ただし、セミブロックおよびインデントフォームによるレターのように文書主題行をレター中央位置に記載する場合には、それがそのレターの文書主題であることは明白である。したがって、わざわざ Re やSubjectなどのヘディングを付け加える必要はない。

d)  文書主題のつけかた
  前述のように、ビジネスレターには文書主題を加えるのが原則である。各レターに加える文書主題は数ワードからなる、できるだけ簡潔なものがよい。だらだらと長いものはかえって逆効果となる。数ワードのタイトルでも、それがその文書の内容を的確に表したものであれば、ひとつのパラグラフに相当するだけの内容を相手に伝えることができる。 とはいえ、文書主題を考えるのにあまり時間を費やしていたのでは効率があがらない。要は、その文書が何について書かれたものであるか、あるいはどのような内容のものであるかが一目瞭然にわかればよいのである。あまり凝ったものは必要ないが、ときにはなかなか適当な文句が思い浮かばないこともある。そういう場合に便利な方法として、次の4つのテクニックがある。

d-1) 文書中に出てくるキーワード(キーフレーズ)をそのまま使う方法
  たとえば Figure 43 (p.72) のサンプルレターでは第1パラグラフ末尾に "...our quotation for the PC-56" という一節がある。このレターは、この一節に含まれている Quotation for (the) PC-56 が全体を要約するキーフレーズであり、これをそのまま文書主題としている。また、この範囲をもう少しせばめて Quotation ないし PC-56といういずれかのキーワードを単独で使うこともできる。なお、文書主題や報告書などの表題、あるいは図表のタイトルなどでは冠詞を省略することがある(d-3の解説参照)。

d-2) 該当する文書の発行日付あるいは文書番号を使う方法
  これは、文書主題のつけかたとしては最も簡単で、しかも失敗する確率が低い方法である。もう一度 Figure 43 のレターを例にとると、このレターでは相手側の文書発行日付をそのまま使って Your Inquiry of August 20 を文書主題とすることもできる。なお、このように文書日付をタイトルに使う場合には、Figure 45 の本文1行目にある In reply to your inquiry of August 20, we ...という書き出しは、In reply to the above inquiry, we ... のように書き換えて、August 20という同一フレーズ の重複を避ける必要がある。日付の代わりに文書番号を使う場合も同じである。

d-3) 文書の内容を「…の…」という形でまとめる方法
  この方法は上記ふたつの方法に比べるとやや頭を使う必要があるが、要は「○○(について)の○○」というパターンで内容を要約するということである。通常のビジネスレターはどんなものでもこのパターンを使ってその内容をまとめるができる。仮にこのパターンでその内容を的確にまとめることができないとすれば、そのレターは「1文書1件 (one letter, one subject) 」の原則から外れている可能性が高い。
   以下に示す例はいずれもこのパターンによる文書主題の例である。ちなみに、前記d-2) の方法は文書日付あるいは番号を使って「…の…」というパターンを作ったものであり、d-1) は「…の…」というフレーズに含まれるキーワードを残したものである。なお、日本語では「の」という助詞ですべて処理できるが、英語の場合はその内容によって of や for あるいは about などの前置詞を適宜使い分ける必要がある。 

1) Notice of Price Increase(値上げのお知らせ)
2) Your Letter of August 26(貴社8月26日付けのレター) 
3) Your Order No. 587 of April 5(4月5日付けの貴注文書第587号) 
4) Request for Information(インフォメーションの請求)
5) Request for Catalog and Price List(カタログと価格表の請求)
6) Request for Quotation(見積書の請求)
7) Quotation for PC-56(PC-56の見積書)
8) Tender for the Design, Supply and Installation of RD Oil Refining Facilities(RD精油装置の設計、供給、据え付けについての入札[書類])

  なお、このうち 5) の catalog and price list および 6) の quotation はいずれも普通名詞なので文中では冠詞を必要とする。同じように 7) の PC-56(パソコンのモデル名)も文中では the PC-56 となる。ただし、レターの文書主題行やレポートのタイトル行などでは意味が不明確にならない限り冠詞を省略することができる。もちろん Re: Quotation for the PC-56 のようにきちんと冠詞を加えて書いてもよい。なお、一般にレターの文書主題やレポートのタイトル、あるいは書籍の題名などは各語頭を大文字で表記するが、冠詞や4文字以下の機能語(特に前置詞)は原則としてすべて小文字表記とする。ただし、これらが冒頭に来た場合は例外である。

d-4) 動名詞句を使って内容を要約する方法
  これは、doing something という形の動名詞句を使って、「(…を)…すること」「(…を)…する件」という形で内容を要約する方法である。たとえば、次の Figure 79 に引用したようなフレーズがその例である。この例はある銀行からきたレターからの引用であるが、いかにもセールスレターらしく、文書の内容を動名詞句を使って上手にまとめている。
 

 Figure 79: 動名詞句を使った文書主題の例 

  前述の「キーワード法」を使えば、この文書主題は YOUR SAVINGS ACCOUNTと簡単にまとめることができる。ただし、この文書は顧客に定期預金への継続投資を勧める内容であり、セールスレターとしての訴求力を出すために意図的に MAKING THE MOST OF というフレーズを加えたものである。ただし、この方式は乱用しないほうがよい。たとえば次の例ではわざわざ動名詞(句)を使う理由も、その効果もない。

- Replying to Your Letter of August 26(前ページd-3の2参照)
- Sending Our Quotation for PC-56(前ページd-3の7参照)

2.9.9  本文(letter body)
  通常のビジネスレター本文は「導入部」「展開部」「結部」の3つのパーツから構成される。一般に、初めて出すレターの「導入部 (opening paragraph)」では、まず自分が何者であり (identification of the writer)、なんのためにこのレターを書いているのか (identification of the subject matter) を簡潔に述べる。もちろん、返信の場合には相手はすでにこちらのことを知っているのであるから、identification of the writer は不要である。
  レターの主要なメッセージは次の「展開部 (middle paragraph)」で記述する。展開部のパラグラフの数はひとつとは限らず、one topic, one paragraph の原則にしたがって複数のパラグラフをおくことができる。つまり、3つのトピックがあれば展開部のパラグラフの数も原則として3つになる。
 「結部 (closing paragraph)」は、文字どおりレター全体の結びである。ビジネスレターのほとんどはなんらかの依頼であり、最も重要なのは「で、どうするのか」という点である。したがって、結部では展開部で述べた要旨を確認しながら、これに基づく依頼や指示、 あるいはそのダメ押しをしておく。特に相手の返事やなんらかのアクションを求める場合には、これを具体的に述べておく必要がある。なお、ビジネスレター本文の構成法、および「導入部」と「結部」のパターンと定型表現については次の第3章で詳述する。

2.9.10  結尾敬辞(complimentary close)
 日本語の「敬具」などに相当する英文の結尾敬辞にはさまざまなものがあるが、いずれも本文最後の行から、通例、ダブルスペースの間隔をあけて配置する。フルブロックフォームのレターでは次の例のように書き出しを左マージナルラインにそろえる。
 

 Figure 80: 結尾敬辞の位置-例1 (左マージナルラインにそろえるスタイル)

  セミブロックおよびインデントフォームのレターでは結尾敬辞の書き出し位置について次の3つのパターンがある。

- 日付行の語頭にそろえる方法 
- レター用紙中央線から右寄りの任意の位置に合わせる方法 
- 全体を中央寄せにするセンタリング方式 

  このうち、最初の例は Figure 34 (p.62) や Figure 43 (p.72) に見られるが、このように書き出しを日付行の語頭にそろえると決めておけば、結尾敬辞を常に同じ位置に記入することが  できるという利点がある。
  ただし、このスタイルでは結尾敬辞に続いて(またはその後の署名欄に)企業名や団体名を記入する場合に、その記入有効範囲が限定されてしまうという欠点がある。たとえば、社名(団体名)が The Japan Chapter of the International Society for the Promotion of Science, Technology and Education のような長いものでは、これを 3行(またはそれ以上)にわたって分かち書きすることになり、全体のバランスを大きく崩しかねない。
 

 Figure 81: 結尾敬辞の位置-例2(日付行の語頭にそろえる方法) 


 

   したがって、実用的な観点からすれば、結尾敬辞の書き出しを常に日付行の語頭にそろえると決めるよりは、「レター用紙中央線から右寄りの適当な位置から書き始める」というゆるやかなガイドラインを設定しておくようにするのがよい。こうすれば、Figure 82に示す例のように、書き出し位置をデータの長さに合わせて任意に設定でき、用紙右半分のスペースを有効に使うことができる。
  3つ目のセンタリング方式(Figure 83)は、このふたつのスタイルに比べてデータの記入範囲の自由度がはるかに高く、デザイン的にも優れている。ただし、これに合わせてレターヘッドもセンタリング方式のデザインとなっていること、レター形式がセミブロックあるいはインデントフォームであること、文書主題行も中央位置に配置することなどの制約がある。また、署名欄もすべてセンタリングすることになり、それなりに手間のかかるスタイルである。ただし、最近はワープロやパソコンの性能が向上しており、従来のような手間をかけずにかなり複雑な書式設定ができるようになっている。
  いずれの方式をとるかは、それぞれの企業・団体が独自に決めればよいことである。しかし、以上の例からもわかるように、すべての要素を左マージナルラインにそろえて書き出すフルブロック方式が、タイピングの効率、用紙の有効利用、記載様式および範囲の自由度などの観点から見て、最も優れた方式であることは明らかである。
 

 Figure 82: 結尾敬辞の位置-例3(中央線から右寄りの任意の位置に合わせる方法) 

Figure 83: 結尾敬辞の位置-例4(センタリング方式)


 

a)  結尾敬辞の種類と使い分け
  結尾敬辞にはさまざまな種類のものがあるが、その丁寧さの度合に応じて次の4つのグループに分けることができる。
 

 Figure 84: 結尾敬辞一覧表(米国式標準例)


 

Respectfully 系統の結尾敬辞
  主として外交文書や政府高官、聖職者などに対する公式文書に使う最も丁寧な結尾敬辞。ビジネス文書では、会長、社長、取締役など高位の役職者に対する文書に使うのが普通。なお、クライアントに提出する報告書のカバーレターなどでは Respectfully submitted, という形で使うこともある。

Truly および Faithfully系統の結尾敬辞
  上記に準ずる公式文書、およびフォーマルなビジネス文書に使う結尾敬辞で、かつてはこのグループの結尾敬辞が主流であった。このうちVery truly yours(truely と書くスペリングエラーが多いので注意)およびYours [very] truly はおもに米国式で、Yours faithfully およびFaithfully yours は英国式の結尾敬辞である。Faithfully 系統の結尾敬辞は米国ではほとんど使われない。なお、Yoursを先に書くほうがより丁寧な表現になるとの説があるが、これは根拠がない。しかし、一般にそう考えられているという理由でYours [very] truly および Yours faithfullyというスタイルを採用するのはそれなりに理にかなっている。ちなみに、V.H. Collins は English for Business の中で Yours faithfully という表現について次のように述べている

“in recent years Yours faithfully has come to be regarded too stiff and formal . . . (and) to be replaced by Yours truly, or more commonly, Yours very truly.” (p.50)「最近では Yours faithfully はあまりに堅苦しすぎる表現と見なされており、Yours truly あるいはもっと一般的には Yours very truly を使うべきであるとされている」。

  文中 “in recent years” とあるのは、この本が書かれた1957年頃のことであるが、英国では現在でもfaithfully 系統の結尾敬辞がごく頻繁に使われている。ただし、最近は英国でも Sincerely 系統の結尾敬辞を使う例が多くなっている。一般的なルールとしては、Dear Sir (または Dear Madam)という冒頭敬辞で始めたレターにはfaithfully または truly系統の結尾敬辞を使い、Dear Mr. Doe(または Dear Ms./Miss/Mrs. Doe) のように個人名を使った場合には Sincerely 系統の結尾敬辞を使う。

Sincerely および Cordially 系統の結尾敬辞
  Sincerely 系統の結尾敬辞は主として私信および社交文書に使うが、ビジネス文書でも相手と面識がある場合や、特にパーソナルな感じを出したいときなどによく使われる。かつては米国ではビジネスレターの結尾敬辞として Very truly yours が最も多く使われてきたが(Figure 85, p.122参照)、現在ではよりフレンドリーなトーンを持つ Sincerely系統の結尾敬辞が主流になっている。
  このグループの結尾敬辞のうち、英国ではYours sincerely という形が好んで使われ、米国ではおもにSincerely your または Sincerelyが使われる。なお、Sincerely yoursとSincerely のように yours のある場合とない場合を比較すると、前者のほうがよりフォーマルな表現とされている。この点についてL.E. Watson は次のように解説している(The Bantam Book of Correct Letter Writing. Bantam Books, Inc. 1983.p. 31). 

“Strictly speaking, the use of an adverb ending in -ly (like truly, cordially, lovingly) calls for the use of the accompanying pronoun yours to complete the phrase.  Therefore, it’s always included in your very formal correspondence.”「厳密に言えば、truly, cordially, lovingly(あるいは sincerely)のような -ly で終わる副詞は、フレーズとしての形を整えるために yours という代名詞とともに使うべきものである。したがって、フォーマルな文書ではかならずこれを入れる必要がある」。

  つまり、Sincerely yours (Cordially yours; Truly yours, etc.) が Sincerely (Cordially; Truly, etc.) よりもフォーマルな表現になるのは、これが文法的に正確な用法だからというのである。もっとも、Sincerely が個人的な親しみを表しているのに対し、yours は古いビジネス文書の形式的なトーンを持っているため、Sincerely yours という形は、いずれにせよ Sincerely 単独で使った場合よりもいくらかかしこまったトーンを持つことになる。
  Cordially を使った例は Figure 42 (p.70) および Figure 116 (p.153) に見られる。これはおもに友人・知人宛のパーソナルな文書で使う米国式の結尾敬辞で、英国ではあまり使われない。この点について、英国の Mary Bosticco は “The American Cordially is frowned upon by British circles, but just why is not quite clear.” (米国流の Cordially は英国では好ましくないものとされている。しかし、なぜそうなのかははっきりしない)と述べている(Personal Letters for Business People. Gower Publishing Co., Ltd. England. Third Edition 1986. p.7)。

Regards および Wishes系統の結尾敬辞
  このグループの結尾敬辞は、おもにごく親しい友人に対する私信あるいはグリーティングカードなどに使う。通常の対外ビジネス文書ではあまり使わないが、同僚間の社内メモや電子メールでは他の結尾敬辞に比べてよりカジュアルな語感をもつ regards 系統の結尾敬辞がしばしば使われる。ちなみに、regardsは「人に対する敬意・尊敬の念」が原義で、wishes は「人の幸福や健康、成功などを願う気持ち」を表す挨拶の言葉として使う。したがって、通常の業務に関連した文書ではおもに regards系統の結尾敬辞を使い、社交・儀礼的な内容の文書では wishes系統の結尾敬辞が好まれる(ただし、Best wishes and warmest [personal] regardsのようにwishesとregardsを併用することもできる)。 なお、このグループの結尾敬辞はWith best regards → Best regards → Regardsの順に簡略になるが、wishes系統の結尾敬辞では wishesだけを単独で使う用法はない。また、しばしば best の代わりに kind または kindestを使うことがある(e.g. With kind[est] regards, etc.)。
  もっとも、ごく親しい友人に出す通信文ではどのような結尾敬辞を使おうとあまり気にする必要はない。前出の Bosticco が「(なぜ cordially を使ってはいけないとされているのかは)はっきりしない」と言うのは、つまり Dear Jim, とか Dear Jane, のようなファーストネームで書き出す私信やカードでは、どのような表現方法を使おうが、そもそも他人がとやかく言う筋合いのものではないからである。したがって、このようなパーソナルな通信では十人十色の結尾敬辞が可能である。たとえば、リンカーンは古い友人への手紙を Your friend forever と結び、ハミルトンは自分の息子への愛情を A good night to you, my darling son! のように表現している。マーク・トゥエインが好んで使った結びは Yrs Affy だったという。これは Yours affectionately の省略形である。このほかの例としては次のようなものがある。 

- Hopefully yours; Yours; Yours ever; As ever (ごく親しい友人に)
- With many thanks; Gratefully yours (贈り物や好意に対するお礼をこめて)
- Your friend; Your pal; Your buddy (子供同士の文通などで) 
- Bye for now; Till next time; So long (「バイバイ、またね」という表現) 
- With Love; Love; Lovingly [yours]; Affectionately [yours] (恋人・家族に) 
- Your loving son  (息子から父親に); Your forgetful brother (兄弟に)
- Your former student (教え子から元の教師に)
- Yours in haste (「とり急ぎ」という表現)
- Yours very annoyed (苦情の手紙などで皮肉を込めて)

【参考】ある調査によれば、米国で発行されたビジネス文書に使われた結尾敬辞の種類とそれぞれの使用頻度は次表のとおりであると報告されている。[44]

 Figure 85: 結尾敬辞の使用頻度(米国)

  [44]『実用英語ハンドブック』(森澤三郎他/大修館 1987. p.36)より引用。『実務英文通信』(中内正利/研究社 1975. pp. 26-27)にも同じような統計が紹介されているが、いずれもデータの出典(原典)は不明。

  この調査がいつ、どのような方法で行われたのかは不明だが、おそらく20年またはそれ以上前のものだと思われる。仮に現時点で同じ調査を行ったとすれば、このうち Sincerely yours をはじめとする Sincerely 系統の結尾敬辞が上位にランクされ、Very truly yours および Yours [very] truly の頻度はかなり低くなるものと思われる。また、ファクスや電子メールの普及にともなって使用頻度の高くなってきたregards系統のカジュアルな結尾敬辞もリストの上位に含まれてくるだろうことも想像にかたくない。たとえば、 1989年に出版されたThe Random House Book of Contemporary Business Letters では、同書に掲載されている275例のモデルレター(社内メモランダムを含む)のうち、全体のおよそ54 パーセントが Sincerely 系統の結尾敬辞を使い、11パーセントが Truly 系統の結尾敬辞を、8パーセントが regardsおよび wishes 系統の結尾敬辞を使っている。また、結尾敬辞を省略した文例(おもに社内文書)が全体のおよそ 17パーセントを占めている。
  なお、前掲の表の中に faithfully 系統の結尾敬辞が含まれていないのはこの調査が米国で発行されたビジネスレターを対象にしているためである。ちなみに、Yours faithfully とか Yours very truly という結尾敬辞は、もともと We are, Dear Sirs, your obedient and humble servants. とか We are, Gentlemen, your most obliged and faithful servants. などといった格式ばった結尾文言が次第に簡略化されて、We remain, Dear Sirs, yours faithfully. あるいは We are, Gentlemen, yours very truly. となり、やがてこれが現在の結尾敬辞 (complimentary close) として独立して使用されるようになったものである。たとえば、第2次大戦当時の英国首相ウィンストン・チャーチルが国王に宛てた手紙の結びの文句に “With my humble duty, I remain Your Majesty’s most devoted, faithful servant and subject.” (War Memoirs. Winston S. Churchill) という表現が見られる。外務省儀典官の寺西千代子氏によれば、大使や高位の人に対する公式/社交文書の中では、いまでも Your obedient servant, という表現が結尾敬辞として使われることがあるらしい。[45] ただし、現在のビジネス文書ではこのような古風で時代がかった表現は使わない。

 [45]『国際ビジネスのためのプロトコール』(有斐閣 1985. p. 188)

b)  冒頭敬辞と結尾敬辞の組み合わせ
 日本語文書では「拝啓」に対し「敬具」、「前略」に対し「草々(早々)」をそれぞれ用いるといったきまりがある。同じように、英文レターでも冒頭敬辞と結尾敬辞の組み合わせにはある程度気を使う必要がある。たとえば Dear Fred, というパーソナルな冒頭敬辞に対して、これを Respectfully yours, と受けたのではいかにもバランスがとれない。反対に、重要な取引先のトップクラスに宛てたフォーマルな文書を Yours, とか Best regards, と結んだのではいかにもなれなれしい感じがする。
  参考までに、冒頭敬辞と結尾敬辞の標準的な組み合わせ例を一覧表にしておく(次ページFigure 86参照)。このうち、1) は会長、社長など企業・団体のトップクラスに宛てた文書や政府機関に提出するごくフォーマルな文書の場合、2) は通常のビジネス文書のうち特にフォーマルな性格のもの、あるいははじめての相手に出す初信(この場合、宛名も Dear Sirs: または Ladies and Gentlemen: のようになる可能性が高い)、3) はごく一般的な内容のビジネス文書(特に個人的な面識のある相手に宛てた文書)やビジネス社交文書、あるいはダイレクトメールなどで特にパーソナルな感じを強調したい場合の例。最後の 4) はメモランダムや電子メールなどの社内文書の場合である。ただし、メモランダムや電子メールではしばしば冒頭敬辞と結尾敬辞を省略することがある。なお、いずれの場合も女性宛のときは冒頭啓辞の Sir をMadam に、Mr.を Ms. にそれぞれ変更する。 

 Figure 86: 冒頭敬辞と結尾敬辞の組み合わせ(米国式ビジネス文書標準例)

  このように、文書の種類あるいは相手に応じて使用すべき結尾敬辞をあらかじめ決めておけば、前述のようなおかしな組み合わせもなくなる。また、たとえば新入社員がレターを書く場合に、どの敬辞を使ったらよいか迷うこともない。 
  使用すべき敬辞を決めておけば、逆に、文書中に使われている敬辞の種類から相手の立場や発信者と受信者の関係などをある程度推測することも可能になる。たとえば、数年前に発信したあるレターが Respectfully yours, と結んであれば、その手紙の受信者がどのような立場にあった人物かおよその見当がつき、社内の第三者(たとえば新任者ないし新入社員)が新たにその相手に対して文書を発行するときなどに的確な対応ができる。同じように、ある文書が Sincerely yours, と結んであればそのレターはおそらく「個人的な面識のある相手に宛てた文書かビジネス社交文書、あるいはダイレクトメール」であり、発信者はこのレターで「特にパーソナルな感じを強調」しているのだということがわかる。

2.9.11  署名欄(signature block)
  通例、署名欄には自筆署名のほかに、署名者氏名、役職名、所属部課名、および必要に応じて社名(団体名)を記入するが、通常のビジネスレターでは社名(団体名)は省略してもよい。なぜなら社名(団体名)はすでにレターヘッドに明記してあり、署名者がその企業・団体の人間であることもまた明らかだからである。署名欄の位置、およびその書き方はレターフォーマットに合わせていくつかのバリエーションがあるが、最もポピュラーな書式はフルブロック方式とセミブロック方式である。

 Figure 87: 署名欄の位置と書き方1(フルブロック方式)

  セミブロックフォームの場合は次のように結尾敬辞の書き出し位置に合わせて署名欄を配置する。これはインデントフォームの場合も同じである。 

 Figure 88: 署名欄の位置と書き方2(セミブロックおよびインデントフォーム)

  このほか、署名欄(および結尾敬辞)をレター用紙の中央位置に配置するセンタリング方式や、インデント方式のより古風なスタイルであるステップ方式 (step form) などがあるが、前者の例については Figure 42 (p.70) および Figure 83 (p.119) を参照されたい。ステップ方式の例は Figure 35 (p.63) に紹介してあるが、このスタイルはいささか時代遅れの感が強く、現在はほとんど使われていない。
  なお、上記の例ではいずれも署名者氏名、役職名、および所属部課名をそれぞれ別の行に分けてあるが、次のように2行にまとめてもかまわない。

  なお、英国では次のように署名者の役職名や肩書きをカッコで括って表記することがあるが、かならずしもそのようなルールがあるというわけではない。


 

a)  ファクスレターの署名
  一部には、ファクスで送信する文書には署名は必要ないと考えている人もあるが、 ファクスレターといえども対外的に発行するビジネス文書である以上、発信者のサインを加えておくことはごく当然のことである。[46]

  [46] ちなみに、ファクスは電話回線を通して文書をイメージ信号として送付するものであり、相手に届けられる文書には当然のことながら肉筆署名がない。この意味で、ファクスは法的には「正式文書」としてみなされないことがある(ファクスレターには署名は要らないという考え方はこれをひとつの根拠としているものと思われる)。とはいえ、これは何か問題が起こった場合にその文書としての法的正当性 (legal authenticity) を問われることがあるということであって、日常的な連絡業務に使うファクス文書については、一定の要件さえ整っていれば便宜的にこれを正式な文書としてみなすのが慣習であって、ファクスであるというだけの理由でいちいちその正当性を問い、あるいは問われるということはない。

  ファクスレターを通常のビジネスレターのフォーマットで作成する場合は前記 Figure 87 ないし Figure 88に示したようなスタイルで署名を加えておく。ただし、いわゆるオフィシャル・メモランダムフォームで作成する場合、つまり発信者の氏名、役職名、および所属部署名などの必要事項を「前付け」の Fromの項目に記入する場合は、Figure 41 (p.69) の例にあるように結尾敬辞の下に発信者の自筆署名のみを加えておけばよい。[47]

  [47] 関連解説と用例は第1章 (p. 24) 参照。なお、Figure 41 のサンプルレターでは「前付け」の From の項目に発信者氏名しか明記していないが、これはこのレターの内容が業務とは直接の関係のない私信に近いものであるためである。
 

b)  署名欄での企業・団体名の記載
  この項の冒頭で述べたような理由で、通常のビジネスレターでは署名欄に会社名を記入する必要はない。ただし、実際には会社名を記入しているケースも多く、特に英国系の企業ではその傾向が強い。また、契約書やそれに準ずる内容・性格の文書などでは一般に英米とも署名欄に自分の代表する企業または団体の名称を記入しておくのが普通である。
  企業・団体名を入れる場合には、これを結尾敬辞のすぐ下に記入する例と(この場合は企業・団体名を大文字で書くことが多い)、署名欄の最後の行に記入する例とがある(この場合は各語の頭のみ大文字にするのが普通)。両者の使い分けについて、前者は文書の内容に関してその企業・団体が責任を負い、後者は署名者個人が責任を負うとする説がある。この説には特に法的根拠があるというわけではなく、またそうした商慣習が一般に確立されているわけでもない。

  ただし、企業によってはこの使い分けを明確にして書類の差別化をしているところもある。もっとも、これは社内的な手続きであって、対外的にはいずれの場合も署名者は会社を代表してサインをしていることに変わりはない。
  なお、以下の例に示すとおり、企業・団体名の前にfor または p.p. という代理文言を加えることがある。このうち、 p.p. はラテン語の per procurationem (= as the agent [representative] of) の略で、p.p. の代わりに per procuration または per pro. と略記することもある。いずれも「(会社・団体など)を代表して」という意味であるが、これを加えなくても特定の企業・団体を代表して文書を発行していることに変わりはない。p.p. と for の使い分けについて、前者が正式に署名権を与えられたうえで会社を代表して署名する場合に使われるのに対し、後者は正式の署名権がないまま、さして重要でない事柄の処理を担当者レベルで行うときに使うものという説がある。現実にはこの両者はほとんど同じレベルで使われているが、社内で新たに「文書作成マニュアル」を作成する場合には、この見解にしたがって、forと p.p. の使用レベルを分けておくのもよいだろう。 

 Figure 89: 会社名を署名欄冒頭に記入した例

 Figure 90: 会社名を署名欄末尾に記入した例   


 

c)  署名欄に記入する会社名が長い場合
  署名欄に記入する企業・団体名が長くなる場合には、これを2行あるいはそれ以上に分けて書くことになる。この場合、書中宛名の項 (Figure 57, p.88)でも説明したように、各行の改行位置はレター用紙左右中央線付近、あるいは長い場合でも右端から 1/3 あたりを一応の目安にする。

 Figure 91: 長い社名・団体名を左マージンにそろえて分かち書きした例 

  この例のように、フルブロックフォームのレターでは用紙のスペースを有効に使うことが可能であり、かなり長いものでもレイアウト上は特に大きな問題なく処理することができる。一方、署名欄をレター用紙の中央線から右寄りの位置に配置するセミブロックないしインデントフォームのレターではデータの記入可能範囲が限られ、場合によっては全体のバランスをかなり崩すことになりかねない。したがって、セミブロックないしインデントフォームのレターでは無理に右端のせまい部分にデータを詰め込むのでなく、次のように全体をセンタンリングして分かち書きするスタイルをとるほうがよい。 
 

 Figure 92: 長い社名・団体名をセンタリングして分かち書きした例

  この書式はフルブロック方式と同じようにレター左右のスペースを有効に使えることや、デザイン的にも優れていることなどから、もっぱらこのスタイルのレイアウトを好んで使っている企業もある。特にダイレクトメールやビジネス社交文書などではさかんに使われている書式のひとつである(Figure 42, p.70参照)。

d)  署名者が女性であることを明記する場合の書式
  署名者が女性であることを特に明記しておきたい場合は、通例、署名欄の typed signatureの後に (Ms.), (Miss) あるいは (Mrs.) とカッコで括って記入しておく。ちなみに、日本人の女性名は “o” の音で終わることが多いが、ラテン語系の国では “o” で終わる名前は男性名であることが多い(反対に、“a” で終わる名前は女性名であることが多い)。したがって、署名欄に記入する typed signature がたとえば Hanako Yamada となっている場合、相手からの返信の宛名が Mr. Hanako Yamada となってしまうことがある。これを防ぐためには、初めての相手に出すレターでは次のように typed signature を Hanako Yamada (Ms.) のようにして性別を明確にしておくほうがよい。
 

 Figure 93: 署名者が女性であることを特に明記したい場合の書式例


 

  なお、既婚女性用の敬称である Mrs. を使う場合、Mrs. Taro Yamada のように夫の姓名を使うことがある。これを social signatureと呼び、フォーマルな社交文書などでよく使われる書式である。しかし、ビジネス文書ではMrs. を使う場合でも Mrs. Hanako Yamada のように彼女自身の名前を使うのが普通である。また、 既婚・未婚の区別はビジネスに直接関係がないという理由から、最近のビジネス文書では女性に対してMs. を使うことが多くなっている。ただし、相手が typed signature で Hanako Yamada (Mrs.) と指定してきた場合には、返信の宛名もこれに合わせて Mrs. Hanako Yamada とすることになる。

e)  肩書きがない場合の署名欄の書式
  通例、ビジネス文書は各部課の長の名前で出すのが普通であり、会社を代表する立場にない平社員が自分の名前で対外文書を発行する機会は実際にはほとんどない。しかし、さして重要でない連絡文書や定型文書などについては、文書の発行および署名権限を現場の実務担当者に委譲することがある。このようなケースでは担当者名の前にbyと記入した上で署名するのが一般的である。たとえば、Japan Trading 社の Customer Services Divisionに所属する一社員が上司から権限を委譲されて自分の名前で文書を発行する場合、署名欄の記入スタイルは次の 1) あるいは 2) のようになる。
 

 Figure 94: 肩書きがない担当者がサインする場合の署名書式例

  ただし、上述のようなケースでも、一般には次項に説明するようにいわゆる「代理署名」(フォア・サイン)という形をとることが多い。

f)  署名権限と代理署名(フォア・サイン)の方法
  前述のとおり、ビジネス文書への署名は原則として正式な署名権者(企業・団体を代表して署名をする権限を与えられた役職者)が行う。誰が正式な署名権者であるかは書類の内容や種類によって異なるが、通常は各企業とも社長、取締役、部長、課長、係長など各レベルでの権限範囲が社内規約で決められており、それにしたがって処理することになる。たとえば部長レベルでの決裁・承認が必要な書類は、その担当部門の部長の名前で発行され、したがって彼がサインすることになる。これは誰が実際にその書類を作成したかに左右されない。
  正式な署名権者が一時不在で、その部下が代理で署名をする場合には次のように正式な署名権者の typed signature の前に for または p.p. (per procurationem = as the agent of; by proxy [= by an authorized representative]) と手書きで記入した上で、代理人が自名自筆のサインを加える。これを一般に「フォア・サイン」と呼ぶ。
 

 Figure 95: 代理署名の例1(標準的書式)


 

  なお、代理署名者が誰であろうと相手にとってはあまり関係のないことであり、通常は代理署名者自身の typed signatureやjob titleを明記する必要はない。たとえば上記の例では代理署名者(この例では Kiyoko Ogawa)が誰であろうと、この文書の責任者はあくまでも Taro Yamadaであり、したがってその返信も Taro Yamada 宛となる。
  代理署名のもうひとつの方法として、代理署名者が自分の名前のサインをするのでなく、本来の署名者の名前のサインをし、その右横に自分のイニシャル(たとえば代理署名者が Kiyoko Ogawaならば K.O.)あるいはフルネームを加えておく方法もある。以下に示す Figure 96の例では John Fabi氏がレターの発信者(サイン権者)となっているが、実際にこのレターを作成したのは秘書の Furn Powers女史であり、彼女の代理サインで発行されている。ここでは Powers女史は John Fabiという名前を手書きし、その横にスラッシュを入れて自分のサインを添えている。この方法はかなり広く行われているが、他人の名前をサインするのはどんな場合でもあまり感心したことではない。

 Figure 96: 代理署名の例2(発信者名に自分のサインを添えた例)

 (図省略)
 

  場合によっては、秘書が上司に代わって文書を作成し、自分の名前と署名で文書を発行することもある。たとえば上司が一時的に不在で、その間に自分の判断で対外文書を作成・発行しなければならない場合、あるいは定型的な連絡・通知文書の発行権限をあらかじめ委譲されている場合などである。この場合、文書の発行責任者は秘書ということになるが、これはあくまでも上司の代理としての行為である。したがって、以下に示す 1) あるいは 2) のような書式をとって文書の作成者とその立場を明確にしておく必要がある。このようにフルインフォーメションが記載してあれば、相手がこの手紙に対する返信を書く場合、その内容によって返信を秘書宛とすることも、あるいはその上司である Taro Yamada に直接宛てることもできる。
 

 Figure 97: 代理署名の例3(秘書が自分の名前で文書を作成し署名した例)


 

g)  for and on behalf of の意味と使い方
  契約書やこれに準ずる文書などでは for and on behalf ofといった入念な代理文言もよく見受けられる。これは「…の代理として (as the agent [representative] of)」という意味のイディオムであるが、一般に英米会社法では社長であれ取締役であれ、会社のために行う業務行為はすべて会社の法的な「代理人 (agent)」としての行為であると考えられている。したがって、契約書などのような重要な書類にサインする場合、署名者の法的な立場を明確にするという意味で、署名欄に “for and on behalf of [ABC Company]” という代理文言を加えることが少なくない。このほか、会社の顧問弁護士などがその会社に代わって何らかの文書を発行するといった場合にもこの代理文言を用いることがある。この場合の標準的な書式は次のようになる。
 

 Figure 98: 署名欄での for and on behalf of の用例         


 

  なお、米語では on behalf of のほかに in behalf of という表現もある。こちらは「…の利益のために (for the benefit of; in the interest of)」の意味に使う。for and on behalf of という代理文言はこの両方の意味を兼ねたものである。[48]

  [48] 一般に、英国では on behalf of を as the representative of という意味と in e interest of という意味の両方を兼ねた表現として使う(ただし英国の語法解説書として定評のあるFawler’s Modern English Usage では “(on behalf of) does not mean, except additionally and by chance, for the advantage of, and it is still in common use.” と述べ、さらに “on is the normal preposition” と付け加えている)。米国のRandom House Dictionary (2nd edition)でもこの両者を同じ意味のイディオムとしているが、The American Heritage Dictionary (3rd edition) では両者の違いについて次のように述べている。“Traditionally, in behalf of and on behalf of have distinct senses. In behalf of means ‘for the benefit of,’ as in We raised money in behalf of the earthquake victims. On behalf of means ‘as the agent of; on the part of,’ as in The guardian signed the contract on behalf of the minor child. The two senses are quite close, however, and are often confused, even by reputable writers.”
 

h)  連名署名の方法
  ひとつのビジネスレターに複数の人間が署名する場合がある。契約書などではこうしたケースが少なくないが、通常のビジネスレターでも内容によっては、たとえば担当者とその上司などの連名で署名を加えることがある。この場合、日本語文書では目下の者から順に名前を記入することが多いが、英文では通例その逆の順番に記載する(ただし「連名宛名」は日英いずれの場合も目上の者から順に記載する)。連名署名の記載例は次のとおり。
 

 Figure 99: 連名署名の例1 

  この例では、Managing Directorの署名欄を左マージンにそろえて記入し、その右側に Sales Manager の署名欄を設けている。下マージンのスペースが十分にあれば Sales Manager の署名欄を Managing Director の署名欄の下に配置してもよい。
  次の例では、この文書に関わる案件の担当者氏名が通常の署名欄の位置に記載され、その下にスーパーバイザーの承認サイン欄が設けられている。Reviewed and approved by: とあるのは Tom Watson 氏がこの文書の内容を確認し承認したという意味である。当然のことながら、このようなケースでは承認者のサイン欄を先に設けることはできない。したがって、Tom Watson 氏が目上(上司)であっても Ms. Joan M. Cappelli の署名欄が先にくることになる。
 

 Figure 100: 連名署名の例2


 

i)  相手の確認サインを求める場合の書式
  ビジネス文書の中には相手の受領確認あるいは内容確認を必要とするものが少なくない。たとえば、重要書類の受け渡しなどに際してはかならず相手の受領印(サイン)を取っておく必要がある。また、電話での打ち合わせや面談での合意事項なども文書によってその内容を相互に確認しておくのがビジネスのルールである。相手の確認サインを取るための方法として最も一般的なのは、こちらから出状する文書の末尾に確認サイン欄を設けておく方法である。Figure 101 はいわゆる「確認状」の例であるが、本文末尾に必要な指示が具体的に明記されていることに注意されたい。なお、この文言は相手の確認サインを求める場合の常套句である(第5章掲載の標準文例 [CP-053], p.543参照)。
 

 Figure 101: 合意の確認サインを求める場合の書式例


 

j)  サインの書き方と実例
  ビジネス文書は発信者の自筆署名があってはじめて正式のものとなる。ファクス文書や電子メールが厳密な意味ではあくまでも非公式な文書であるとみなされるのは、これらの文書には肉筆のオリジナルサインがないからである。自筆署名は日本の印章に相当する大事なものであり、簡単に真似のできるものでは困る。かといって、あまり凝ったものにすると書くたびに字体が違ってしまうことにもなりかねない。
  日本では署名の習慣がなく、いざサインをするとなると子供の書いたような幼稚なものになってしまうことが少なくないが、国際ビジネスに携わる者はそれにふさわしいサインができるようにしておくべきである。欧米ではサインは単なる「記号」という機能のほかに、一種のステータスシンボルという側面もあり、各人が自分の地位や見識を代表させるにふさわしい書体のサインを持ち、またそのための努力も怠っていない。米国にはサイン専門のコンサルタントもいて、これが商売として十分に成り立っているほどである。日本企業のなかにも、新入社員研修のときに先輩や専門の講師を招いて講義を行い、そのアドバイスを受けながら、これから何十年にもわたって使うことになるサインを決めさせているところがある。ビジネスにおいては一度決めたサインを途中で変えることは好ましくない。したがって、このように出発点に当たってサインを決めておくのもひとつの方法である。
  サインの書き方には特にルールというほどのものはない。判読できないサインでもかまわないし、漢字のサインを使ってもよい。[50] 元米国国務長官、ヘンリー・キッシンジャーは外交文書にサインする場合でも HK というイニシャルをややデザイン化したものを使っている。これは、日本でも昔から武家、貴族、あるいは禅僧などが用いた「花押」のようなものである。このような個性的なサインを使うことは一向に差し支えないが、ビジネス文書ではかならずサインの下にフルネームを記入し、その読み方がわかるようにしておく(これを typed signature と呼ぶ)。また、サインはひとつだけとは限らず、書類の内容や相手によっていくつかのバリエーションを使い分けることもできる。たとえば正式書類には Taro Yamada のようにフルネームのサインを加え、やや内容が軽いものについてはT. Yamada とし、さらに社内メモランダムには T.Y. のようにイニシャルを使うなどといった具合に使い分けるのである。 
  参考までに、次ページ以下に各種のサイン例を示しておく。最初のグループ (Figure 103) は英米人によるサインの例、次のグループ (Figure 104) は日本人によるサインの例である。ちなみに、Figure 103 の 3) は米国の元大統領 Ronald Regan氏のサイン。同 12) は米国カレッジイングリッシュ協会の元会長 Earle Labor氏の署名で、同氏はカリグラフィー(英字書道)の大家としても知られている。

  [50] なお、かつては漢字を使ったサインを拒否されたり確認のために長時間待たされたなどといったこともあった。国際社会における日本経済の力が相対的に強くなった現在ではそのようなことはほとんどないと思われるが、無用なトラブルを避けるためにも、できるだけ英字のサインを持っているのが好ましい。ちなみに、日本語の氏名をローマ字表記する場合、Taro Yamada のように英米の慣習に合わせて first nameを先に書くべきか、それとも Yamada Taro のように本来の順番のまま表記すべきかが問題になることがある。これは原則としてどちらでもかまわないが、後者のスタイルをとる場合には Yamada, Taro または YAMADA Taro のように表記しておくと Yamada (YAMADA) が family name であることをほぼ誤解なく相手に伝えることができる。

 Figure 103: 英米人によるサイン例

 (図省略)

 Figure 104: 日本人によるサイン例 

 (図省略)
 

k)  署名者肩書きについて(英語で「肩書き」をどう表すか) 
  ビジネスでは「肩書き (business title)」はかなり重要な役割をもっている。国内はもとより、外国企業との交渉においても、商談を進めるに当たって相手がどのあたりの地位にいる人間かをよく知ったうえでないと効果的な話はできない。また、こちらもそれなりの肩書きを持っていないとまともに相手にされないことが多い。
  相手がどの程度の地位にいる人間で、どのような権限をもっているかを知るには、とりあえず相手の肩書きがひとつの目安になる。しかし、各企業によって社内組織がまちまちであり、職名は同じでもその実質が異なることも少なくない。また、日本と外国ではそもそも職制が違うので、肩書きだけではその人が実際にどのあたりの地位におり、どの程度の権限をもっているのかを正確に判断することはむずかしい。たとえば、相手の名刺にManager とあったとしても、これだけではその相手がいわゆる部長クラスなのか、課長なのか、あるいはもっと上の地位にあるのかはわからない。同じように、ほぼ同等の立場にある役職者が、ある企業では Manager と呼ばれ、別の企業では Director と呼ばれていることもある。一般論としては、Director は取締役クラスの役職者を指し、部・課長クラスの管理職を Manager と呼ぶ。この場合、部長、課長、係長の区別はそれぞれ Department Manager; Section Manager; Assistant Section Manager のような表記法によってつけるのが普通である。ただし、企業によっては課長を Assistant Manager、係長を Section Chief あるいは Supervisor のようにしているケースもある。
  以下、参考までに平均的な日本企業の役職タイトルをそれぞれの英訳例とともに掲載しておく。ただし、これはあくまでも一般的なモデルであって、企業・業種によって組織構成、および各タイトル名の英訳が異なることがある。なお、このうち特にコメントが必要なものについては各行末に番号を付し、それぞれ補足説明を加えておく。
 

 Figure 105: 役職タイトルの英訳例

1)  Chairperson
  「取締役会会長」のようにフルネームで呼ぶ場合は the Chairperson of the Board of Directors となる。なお、従来使われていたchairman は性差別用語とみなされることがあり、現在では総称として使う場合はchairpersonが普通。ただし、特定の男性を指していう場合は chairmanでよい(女性の場合は chairwoman)。名誉会長は Honorary Chairperson という。

2)  President
  米国では President(社長)といっても経営上の実権がないことがあり、いわゆる代表取締役社長に相当する「最高経営責任者」を Chief Executive Officer (C.E.O.) と呼ぶことが多い。また、President と C.E.O. はかならずしも同一人物であるとは限らない。したがって、この両職を兼ねる場合は名刺などの肩書をPresident and C.E.O. のように並記しておくのがよい。会長がC.E.O.を兼ねる場合はChairman(または Chairperson)and C.E.O. となる。

3)  Vice President 
  米国企業では、日本の「部長」に当たる役職者をすべてvice presidentと呼ぶことがあり、ひとつの企業に多数の vice president がいることがめずらしくない。したがって、日本企業の場合のようにexecutive officerとしての「副社長」であることを明示するためには Executive Vice Presidentとするのがよい。また、複数の副社長の中の筆頭であることを示す場合は Senior Vice President(上席副社長)のようにする。

4)  Director
  Director (= a member of the Board of Directors) は一般にはいわゆる「取締役」を指すが、米国企業では「部長」クラスの役職を Directorと呼ぶことが少なくない。官庁では一般に「局長」クラスを Director(または Chief) と呼ぶ。専務、常務はそれぞれ Senior Managing DirectorおよびManaging Directorという呼称で区別することができる(Managing Director の代わりに Executive Director という名称を使うこともある)。ただし、英国では Managing Director (MD) は「代表取締役社長」(または最高経営責任者)を指すのが普通。なお、「非常勤役員」 はOutside Director と呼ぶ。

5)  Advisor 
  相談役は advisor(またはadviser)でよいが、一種の名誉職としての地位を強調する場合はSenior Advisorのようにすることがある。特定の役職者(たとえば社長)に対する相談役という場合はAdvisor to the President のようにいう。顧問も英語では advisor/adviserということになるが、専門的・技術的な分野でのadvisor は、たとえば technical consultant(技術顧問) や legal counselor(法律顧問)のように consultantやcounselor と呼ぶことが多い(ただし、いずれも advisor に置き換え可能)。一般的な「顧問」は、これと区別する意味でしばしば Corporate Advisor と呼ばれる。なお、-or はラテン語起源の接尾辞で、動詞に付けて行為者を示す。

6)  General Manager 
  General Manager は特定の事業に関する複数の業務分野、またはセクションを統括する立場にある役職を指し、通常、複数のmanagerを指揮下におく(いわゆる総支配人にあたる)。したがって、「支店長」もその実態に応じて、General Managerと呼ぶことがある。e.g. General Manager of the New York Branch (or New York Office) 「ニューヨーク支店長」 。なお、特定のプロジェクトに関する責任者([事業]本部長)を特にProject Manager と呼ぶことがあるが、通例、これはそのプロジェクトが継続している間の暫定的な呼称。

7)  Department Manager 
  Department ManagerやSection Manager、あるいは Branch Managerなどの呼称はそれぞれの役職に対する一般呼称で、実際には Manager of the Personnel Department = Personnel Manager(人事部長)、Manager of the Accounting Section = Accounting Manager(経理課長)、あるいはManager of the Osaka Office/Branch(大阪支店長)のように特定の部署名を並記する。ビジネスレターの署名欄または名刺などでの表記例は以下に示す「参考例」参照。

8)  Deputy Department Manager
  次長・副長・補佐職はDirector; Manager; Chiefなどそれぞれ所定の役職名にVice; Deputy; Associate; Assistant などの形容詞を冠する (e.g. Vice President; Deputy Director; Associate Manager, etc.)。このうち、deputy は本来は public officials(役人)に対して使われる肩書きで「代理」というほどの意味。ただし、実際にはビジネスでもassistant(副・補佐)とほとんど同じ意味で使われている。associateと assistant では一般に前者のほうが上位であることを示唆する。このほかにActing Managerという表現もある。これは直属の長である Managerが一時的に不在、あるいは空席であるような場合に「代行」という意味で使うのが普通。

【参考例:人事部】 

1) 部長  山田太郎
Taro Yamada 
Manager 
Personnel Department 

2) 次長  山本一郎 
Ichiro Yamamoto 
Associate Manager
Personnel Department 

3)  部長代理  鈴木義雄 
Yoshio Suzuki 
Acting Manager 
Personnel Department 

4) 副部長/部長補佐  田中三郎 
Saburo Tanaka
Assistant Manager
Personnel Department

5)  人材開発担当(課長待遇) 竹田二郎
Jiro Takeda, Manager 
Human Resources Development [Section]
Personnel Department 

6) 採用担当(係長待遇) 小川よしこ
Yoshiko Ogawa, Assistant Manager 
Recruiting [Section] 
Personnel Department 
 

l)  企業各部門名の英訳例
  通例、「部」は department、「課」は section、「室」は office で表す。「部」と「課」の間の中間区分は divisionで表すことが多い。たとえば、Sales Department(販売部)が Domestic Division(国内部門)と Overseas Division(海外部門)に区分され、それぞれの部門にSection 1(販売部国内部門第1課)、Section 2(販売部海外部門第2課)などの実務担当セクションがおかれているといったケースである。ただし、企業によってはdivisionをdepartmentより上位の区分としているところもある。以下、代表的な企業各部門名の標準英訳例を示す。

 Figure 106: 企業各部門名の英訳例

m)  電子メールでの「署名」
  通常のビジネスレターおよびファクスの場合の署名についてはおおよそ以上説明したとおりであるが、電子メールでも「署名 (signature)」と呼ばれるものがある。ただし、これは通常の「サイン」のことではなく、メッセージの末尾に加える送信者氏名や社名・所属部署、あるいは電話番号やファクス番号などの一連の関連データのことを指す。電子メールの「シグネチャー」は絶対に必要な要素というわけではないが、ビジネス関連のメールを送信する場合には、通常の「名刺」に盛り込む程度のデータは付け加えておくほうがよい。ただし、たびたびメールのやりとりをする相手や社内メールの場合はごく簡単に済ますか、省略してもかまわない。なお、電子メールの「シグネチャー」については第4章 (pp. 227-229)で解説する。

2.9.12  通信責任者識別イニシャル(identification initials)
 レター末尾に、そのレターの発行責任者/署名者 (signer)、タイピスト (typist)、あるいは原稿起草者 (originator) などのイニシャルを加えておくことがある。これを ID (= identification) initialsと呼ぶ。IDイニシャルは署名欄の最後の行からダブルスペース以上の余白を置いて左マージナルラインにそろえ、通例、SIGNER/typist あるいは SIGNER/originator/ typist の順にイニシャルを記入する。以下の例ではTY/ys がこのレターの IDイニシャルで、TYは文書発行責任者/署名者のイニシャル、ys はタイピストのイニシャルである。 

 Figure 107: 通信責任者識別イニシャル記入例1


 

  IDイニシャルは基本的には発信者側の後日のレファレンス用に加えておくものであって、絶対に必要な要素というわけではない。したがって、これは省略してもよい。また、ID イニシャルを記載する場合でも、その書き方についてはそれぞれの企業・団体が最も適当と考える方式でかまわない。一般には、上記の例のように署名者イニシャルとタイピストのイニシャルを、それぞれ大文字と小文字で記入しておく程度である。
  なお、欧米ではレターを口述筆記させることも多く、この場合は口述筆記者(多くは秘書が口述筆記者とタイピストを兼ねる)のイニシャルを加える。また、場合によっては実際にその文書を作成した人 (originator) や翻訳者 (translator) などのイニシャルを加えることもある。IDイニシャル の代表的な記載例は以下のとおり。なお、各イニシャルの区切り記号としてはスラッシュ (/) のほかにコロン (:) を使うこともある。いずれの場合も区切り記号の前後にはスペースを加えない。

 1)    TY  or  /TY     (SIGNER)
 2)    TY/ys           (SIGNER/typist)
 2-1)  ty/ys           (signer/typist)
 2-2)  Taro Yamada/ys  (Signer/typist)
 3)    TY/RR/ys        (1st SIGNER/2nd SIGNER/typist, etc.)
 4)    TY/hm:kj:ys     (SIGNER/originator:translator:typist, etc.)

  通例、1) は署名者 (TY) が文書の作成を原稿の起草からタイピングまで含めてすべて自分で行ったという意味で使う。2) は前述のとおり。2-1) と 2-2) は 2) のバリエーション。3) は以下に示すように署名者が2名いる場合の記載例である。
 

 Figure 108: 通信責任者識別イニシャル記入例2(連名署名の場合)


 

  4) は署名者 (TY) のほかにその文書を実際に作成した人 (hm)、およびそれを翻訳した人 (kj) がいることを示す。もっとも、こうしたインフォーメションは相手にはあまり関係のないことであり、対外文書では通常このようにごてごてと沢山のイニシャルを加えない。どうしても必要な場合は、次項に述べる blind ID initials を使うようにする。

a)  Blind ID initilas の使い方(署名者とレター起草者が違う場合) 
 レターの発信者/署名者 (signer) と実際にその文書を作成した人 (originator) が違うことが、実際にはしばしばある。そのような場合の IDイニシャルの書き方については特に一般的な決まりはないが、対外的な配慮を重視した場合には originator が誰であるかにかかわらず、上記 2) のように署名者とタイピストのイニシャルだけを記しておく。反対に、対内的な配慮、つまり社内あるいは部内における後日のリファレンス(あるいは責任の所在の明確化)ということを重視した場合には、実際にその書類の作成に関わった人物のイニシャルをすべて明記することになる。
  ただし、前述のように、こうしたインフォーメーションをわざわざ相手に知らせる必要はなく、後者のケースではいわゆる blind ID (initials) と呼ばれる方法をとることが多い。これは、オリジナルレターには通常どおり署名者とタイピストのイニシャルだけを記し(あるいはすべて省略し)、ファイル用のコピーに必要なデータを後から書き入れておく方法である。
  ブラインドIDの記載例は次のとおり。この例では1枚目のレターがオリジナルで、受信人はこれを受け取ることになる。2枚目は発信者用の控えコピーで、カッコ内に blind ID initials が加えられている。
 

 Figure 109: ブラインドIDの例 


 

  なお、上記のような方法をとる代わりに、たとえば Written by Hiroshi Maeda(文書作成者、前田博)のようなコメントを余白に手書きで書き入れてもよい。このようなメモ書きを「マージナル・ノーテーション」と呼ぶ。

b)  ID initialsとReference lineの混用
 次ページの例に示すように、IDイニシャルをレターの冒頭に記入した例をときたま見かけることがある。これは Reference lineなどと紛らわしくなるので避けるべきである。また、レター要素の重要度の点からも、IDイニシャルはレターの末尾に付するのが適当である。
  このような例は英国系企業から来るレターに多く見られる。[52]  しかし、これでは冒頭に記載されている SW/PL というのが IDイニシャルであるのか、それともreference lineであるのかよくわからない。Our Ref.: SW/PL とあれば、当然これを reference lineと考えるべきであるが、SW/PL という組み合わせで発行したレターはこのほかにもたくさんあるはずであって、これだけでは有効なリファレンスにはならない。たとえば返信に With reference to your letter, SW/PL, . . . とか Your Ref. SW/PL などと書かれても、これがどの文書を指すのか特定することができない。したがって、reference lineとIDイニシャルは明確に区別し、前者はレター冒頭の日付の下、または上の行に記入し、IDイニシャルは署名欄の下に記入するというように統一すべきである。また、すでに述べたとおり、reference lineにはあくまでもその文書固有の参照番号なり記号なりを加えるべきである。

  [52] 英国で発行されているビジネスレターの参考書では、いわゆる reference line と ID initials を区別していないものが多い。たとえば、A Handbook of Commercial Correspondence (A. Ashley. Oxford University Press. 1984. p. 9) では次のように解説している。“References may either appear in figures, e.g. 661/17 in which case 661 may refer to the chronological number of the letter and 17 to the number of the department, or . . . in letters, DS/MR, in which case DS stands for the writer, Donald Sampson, and MR for his secretary, Mary Rogers.”
 

 Figure 110: IDイニシャルをレター冒頭に加えた例


 

c)  文例番号の記入(フォームレターを使う場合) 
  後述のように、通常のドキュメンテーション業務の70パーセント以上は定型文書の作成・処理だとされている。通例、見積書や納品書などのごく定型的な文書は帳票化された記入式フォームを使って文書処理業務の効率化をはかっている。帳票化に適さないような一般的なビジネス文書については、標準的な文例を適当なカテゴリーごとにそろえた『模範文例集』を整備してドキュメンテーション業務の支援をしてきた。
  帳票方式のフォームレターは文書作成業務の効率化に大いに役立つが、応用性・柔軟性に欠ける。また、コスト的に大量印刷してストックしておく必要があり、その種類が多くなった場合の保管スペースの問題や、使われないまま廃棄処分になってしまう割合の高さなど、さまざまな不都合がある。実例を中心にした『模範文例集』は、たしかに文案を練る際のよい参考、あるいはお手本になる。しかし、実例はすべて個別的・具体的であるがゆえに汎用性に欠け、しかもごく一般的な文例はほとんど実際の役に立たない。さらに、各企業・団体で発行する文書の内容や種類は、その企業・団体の発展および業務内容の変化にともなって変わっていくものであり、あらかじめ印刷された記入式フォームや、実例をまとめた『模範文例集』だけではこうした変化に柔軟に対応することができない。
  しかし、最近ではワードプロセッサーの普及にともなってこうした問題が一挙に解決され、同時にドキュメンテーション業務の一層の合理化が可能になってきた。現在では、ほとんどの企業・団体が記入式のフォームや模範文例集を通常の印刷物の形でそろえておくことをやめ、その代わりにすべての文書データをフロッピーディスクに記憶させ、これをプリンターで打ち出して使っている。文書を作成するときはディスクに記憶させた文書データの中から適当な文例をディスプレー上に呼び出し、必要な修正・加筆を加えるなどの作業を行った後、プリントするのである。
  こうして発行される文書は1通ごとにプリンターできれいに打ち出されるので、出来合いのフォームに必要事項のみ記入して作成した文書と違って、簡素化・省力化の印象を相手に与えずにすむ。簡素化・省力化は情報の発信者側にとっては効率化・合理化であるが、相手には「手抜き」という印象を与えかねない。また、ワープロデータとして保存された文書データは、その柔軟性、発展性、拡張性のゆえに、あらかじめ印刷・製本された通常の模範文例集よりも優れている。
  このような方法で文書を作成する場合、文書管理および文例データ集のメンテナンスのために、参照した文例の文例番号を適当な位置に明記しておくとよい。この場合、通常は以下の例に示すように IDイニシャルの行末に文例番号を記入する。この例では、この文書が IQ-012という文例番号のついた文例を使って作成されたものであることを示す。文例集にない文書を新たに作成した場合は、それに新たなコード番号を付して文例集に追加しておく。コード番号の付け方については一定の方法をあらかじめ設定し、混乱のないようにしておく必要がある。なお、文例番号の記入は前述の blind ID 方式で行ってもよい。
 

 Figure 111: 文例番号の記入例 


 

2.9.13  同封物注記(enclosure notation) 
  同封物がある場合は、”We have enclosed . . . “ とか “Enclosed is/are . . . “ のような文章によって本文中でそれを明確に示しておくが、さらに enclosure notationという形で同封物の有無をレター末尾にも明記しておくのが普通である。一般には enclosure notation は ID initials のすぐ下の行に(ID initialsを省略する場合は署名欄の最終行からダブルスペースまたはそれ以上の間隔をあけて)、左マージナルラインにそろえて Enclosure[s] (省略形はEncl[s].)と記し、必要に応じてこの後に同封物の内容や部数、ページ数などを追記しておく。なお、enclosure[s] の代わりに attachment[s] という単語を使うこともある。特に、ファクスで書類を送付する場合は attachment[s] を使うことが多い。これは、ファクスには書類を「同封」できないという単純な理由からであるが、ファクスでも習慣的に enclosure[s] を使っているケースも少なくない。このほか、Enclosed:(または Attached:)のように表記することもある。
 

 Figure 112: 同封物注記 (enclosure notation) の記入例

  なお、この例のように本文中に “...we have enclosed our quotation for the PC-56h と同封物の内容が明記してある場合には単に Enclosure または Encl. と記しておけばよいが、単に As you will see in the enclosed document, we have... とだけ書いてある場合にはEnclosure: Quotation for PC-56 のようにして同封物の内容を明記しておく(コロンの後は1-2文字分のスペースをあける。p. 101の脚注 45参照)。
  Enclosure の省略形は Encl. および Encls. のいずれも可能だが、前者は単数形の略語、後者は複数形の略語というように使い分けたほうがよい(英国では Enc. という省略形を使うことが多い)。複数の同封物がある場合には、通常、次のような書式をとる。この場合も本文中に同封物の内容・部数などが明記されていない場合には 2) あるいは 3) のように書いておく。

  同封物を返送して欲しい場合には Enclosure (to be returned) のように書いておくか、あるいは Please return the enclosure by April 1. のようなコメントを加えておく。なお、上記 2) の for information only という注記はfor reference only と同じく、「ご参考までに」ということであるが、これは not for action という意味を含むので、乱用しないよう注意する必要がある。つまり2) の場合は同封する値段表 (price list) はあくまでも参考資料であって、実際の発注用ではないという意味になる。

2.9.14  写し送付注記(carbon copy notation)
 これは、レターの写しを第1受信者以外に送付する場合に、その送付先を明記するためのもので、通例、レター最後尾に cc: または Copy to: というヘディングを加え、その後に写し送付先を列記する。なお、cc は carbon copy の略で、本来はいわゆるカーボン紙による複写のことを指す。ただし、現在では carbon copy かどうかにかかわらず一般に文書の写し送付先を示す略号として使われている。ただし、企業の中には、意図的な後修正ができないという carbon copy の利点を生かして、経理関係の書類などを送付する際にはカーボン紙による複写を使っているところもある。この場合、carbon copy を送付する際には cc という略語を使い、photocopy を送付する場合は pc: という略語を使って区別する。[53]

  [53] 米国では pc のほかにxc (= xerox copy) という略語もしばしば使われる。なお、carbon copy はもともと “a duplicate of something, as of a letter, made by using carbon paper” という意味であるが、日常用語として、しばしば “a person or thing that closely resembles another” という比喩的な意味でも使われる。なお、cc: はcarbon copy のほかにcourtesy copyの略として使う場合がある。courtesy copyとは「礼儀上送付する写し」という意味で、たとえば文書中に、ある第3者の名前や著作の一部などを引用した場合に、礼儀としてその人にその文書の写しを送付しておくことがある。このようなケースで送付する写しを一般にcourtesy copyと呼ぶ。
 

 以下に写し送付注記の標準的な記入例を示す。この例では pc という略号を使っているが、これは cc としてもかまわない。行末の (W/1) および (W/0) という記号は、同封物も一緒に送付されているかどうかを示すためのもので、(W/0) は without enclosure、(W/1) は同封物がひとつ、またはワンセット一緒に送付されていることを示す。つまり、Mr. Suzuki に対してはこのレターの写しを同封物とともに1部送付し、一方、Mr. Williams にはレターの写しだけを送付しているという意味である。
 

 Figure 113: 写し送付注記 (copy notation) の記入例


 

 ビジネス文書の写し送付先については一般的な規則はなく、通常、各社ともそれぞれの社内規程で定めている。特定プロジェクトなどでは顧客との取り決めに従って行うことになる。また、複数の相手に写しを送付する場合、職位の序列順に記名する場合と、単純にアルファベット順に並べる場合とがある。いずれの方法をとるにせよ、これも社内規定で定めておけば混乱がなくなる。
  なお、たとえば Aという会社の Mr. Fred Thompson 宛にレターを出し、同時にそのレターの写しを同社の他部門の責任者にも送付しておきたいとする。この場合、それぞれに対して写しを送付するのは発信者の責任である。なかには、第1受信者(この場合は Mr. Fred Thompson)がその文書のコピーをとり、それぞれの指定先に配布するものと理解している向きもあるが、これは間違いである。もっとも、オリジナルレターの受信者と同じ企業・団体に属する人に写しを送付する場合には、これを別々の封筒に入れて出す必要はない。このようなケースでは、第1受信者宛のレターに必要な部数のコピーを添付し、それぞれの写しに THIS COPY FOR というスタンプを押してその送付/配布先を明示しておけばよい。

  文書をファクスで送付する場合は、その文書の内容と相手の所属部署および勤務場所に応じて、それぞれの写し送付先に個別にファクスを送る場合と、第1受信者にオリジナル文書の回覧を依頼する場合とがある。後者の場合は、単に c.c. または Copy to: とだけ書いておくよりも、次のような書式をとって、その旨を明らかにしておくほうがよい。この Please forward (one copy each of) this fax to: は「このファクス(のコピー)を以下の人に回覧してください」という意味で、one copy each of の部分は省略してもよい。


 

a)  Blind carbon copy (bcc) について
 いわゆる blind carbon copyというのは、オリジナルレターには写し送付先を明記せず、保存ファイル用のコピーにのみこれを記しておくものである(日本語では一般に「隠しカーボンコピー」と呼ぶ)。これは、書類の配付先を本来の受信者 (addressee) に知らせたくない場合に使い、cc や pc の代わりに bcc (=blind carbon copy) あるいは bpc (=blind photocopy) というヘディングを使う。
  以下に示す Figure 114 の例では、オリジナルレター (1)の受信者はこの文書の写し(および同封物1部)が Mr. Taro Yamada に送付されていることは知らされている。しかし、同じものが法律顧問 (legal advisor) である Mr. John Williams にも送付されていることは知らないことになる。もちろん、Mr. Williams の受けとるコピー (3)と、保存ファイル用コピー (4) は、bpc が明記されている。写し (2) に Mr. Williams 宛の bpc 注記を加えるかどうか(つまり Mr. Yamadaにこれを知らせるかどうか)は、その必要性の有無で判断する。
 

 Figure 114: Blind carbon copy (bcc) の記入例


 

2.9.15  追伸(postscript)
  いわゆる「追伸」は P.S. または PS と略して表記し、その末尾に署名者のイニシャルを手書きで付け加えておく。イニシャルを加えておくのは、その追伸がだれかほかの人が後から勝手に付け加えたものでなく、発信人が自分で加えたものであることを確認するためのものである。したがって、本来はかならず責任者のイニシャルを手書きで加えておくのが原則であるが、実際にはしばしば省略される。特に、後述のように追伸を本文の重要な一部として戦略的に使った場合には追伸の末尾にイニシャルを加えないことが多い。追伸の記入例は以下のとおり。
 

 Figure 115: 追伸 (postscript) の記入例

  なお、内容によっては P.S. の代わりに、次のようなヘディングを使うこともある。このうち3) の F.Y.I. は for your information の略である。 

  1)  Note:  Our special discount offer expires at . . .
  2)  Important:  Our special discount offer expires at . . .
  3)  F.Y.I.:  Our special discount offer expires at . . .

a)  Postscript の戦略的な使い方
  一般に、追伸は「後から思い付いたこと」や「書き忘れたこと」を追記するためのものと考えられている。しかし、このような意味での追伸は書き手が事前に十分なプランを立てずに書いたことを示すだけであって、実際に後から思い付いたことや書き忘れたことがあった場合には、最初からレターを書き直すべきである。Deborah C. Andrews と Margaret D. Blickle はビジネスレターにおける「追伸」の役割について、次のように述べている (Technical Writing: Principles and Forms. (Macmillan Publishing, Co., Inc. 1978. p. 349)。

“A postscript should not be attached unless it is part of a sales letter. It is not an afterthought as we might find in personal correspondence; rather, it is added to emphasize a point or draw attention to a special offer.” (追伸はセールスレターの一部として用いる場合を除いては使うべきではない。これは私信の場合のように、後で思い付いたことを記入するためのものではなく、ある特定のことを強調したり、特別のオファーに相手の注意を向けるためのものである)。

  つまり、ビジネスレターにおける追伸は「ある特定のことを強調したり、特別のオファーに相手の注意を向けるため」の戦略的な小道具だというのである。たとえば、Figure 115 にある「当社の特別値引きの有効期限は9月末日です。ご注文はお早めにお願いいたします」という追伸は、後から思い付いた付け足しではなく、実はこれがレター全体の主要なメッセージ(あるいはそれを補強するもの)となっている。私信においても、たとえば P.S. I love you. のような追伸は、後から思い付いたことやうっかり書き忘れたことではなく、これが最も肝心なメッセージであろうことはまず疑う余地がない。
  米国などでは、一番肝心なことは本文に書かずに、追伸の形で文書末尾に加えるといったことがかなり広く行われている。これは、セールスレターやダイレクトメールなどで特に顕著に見られる現象である。本文は読んでもらえないことをあらかじめ見越してのことであるが、消費者のほうも追伸さえ読めば主要なメッセージがわかることをちゃんと心得ており、ますます本文のセールストークの空洞化が進むという皮肉な現象が起こっている。参考までに、手元にある資料から追伸の戦略的な用例をいくつか紹介しておく。

 Figure 116: Postscript の戦略的な用例 

 (図省略)
 

2.9.16  2ページ目以下のレターヘディングの書き方
  ビジネスレターは簡潔を旨とし、できるだけ1ページ以内に収めるのが望ましい。しかし、ときには2ページ以上にわたって書かなければ論旨を尽くせないこともある。そのような場合には、それぞれのページにも「頭書き」(ヘディング)が必要となる。これがないと、仮に各ページがバラバラになってしまった場合などに、それぞれがどのレターの何ページ目にあたるものかがわからなくなってしまう。
  通常は、各企業とも2ページ目以下の用紙として自社名をあらかじめ印刷した専用用紙を用意している。この様式は各社まちまちだが、次のようなものが一般的である。この例では Japan Trading Co., Ltd. という自社名、および Our Ref.; Date; Page No.という3つのヘディングがあらかじめ印刷されており、その下に適当な間隔(通例、2行から4行程度のスペース)をあけて本文が続いている。
 

 Figure 117: 2ページ目のヘディング例1(2nd page headings が印刷された専用紙の例)

  2ページ目以下の専用用紙がない場合には、上記の例に準じた内容を続きページのヘディングとしてタイプすることになる。この場合、Date: や Page No.: などのガイドワードを記入する必要はない(記入してもさしつかえないが、たとえば April 1, 19-- というのが「日付」であることはだれの目にも明らかである。
 

 Figure 118: 2ページ目のヘディング例2(白紙レター用紙にタイプした例)

  上記の例では、いずれも second-page headings に受取人氏名(個人名または企業・団体名)を使っているが、次の例のように宛名の代わりに文書番号を使ってもよい。

  このほかにもさまざまな書式が可能であるが、いずれにせよ、続きページのヘディングは前述のとおり各ページがバラバラになってしまった場合のためのものであり、この目的を達するものであれば原則としてどのような書き方でもかまわない。
  なお、ファクスの場合は次のように用紙の上部(または下部)余白に、発信日付、時刻、電話/ファクス番号、発信者名、およびページ番号などのデータが自動印字されるのが普通である。通例、ここにどのようなデータを出力させるかはユーザーの側で自由に設定できるようになっており、いったん設定しておけばあとはファクスを送信するごとに自動的に指定のヘディングが印字される。したがって、ファクスレターの場合は、それぞれの文書の冒頭に受信者氏名(または会社名)や文書番号などの個別データのみを記入しておけばよい。
 

 Figure 119: ファクスレターのヘディング例 


 

a) ページ番号の書き方
 ページ番号を表す数字の表記法には、#2, (2), -2-, P.2 など、さまざまなバリエーションがある。このほか、ビジネス文書でよく見られる書式でややわかりにくい例として次のようなものがある。

  なお、すでにページ番号を加えた書類に後からページを追加する場合(たとえば3ページ目と4ページ目の間に追加)には、追加ページの番号を 3-1, 3-2, 3-2 あるいは 3-a, 3-b, 3-c のようにする。cont’d ... の用例は次項参照。

b) 「次ページへ続く」の書き方
  複数ページの文書では、各ページの末尾に To be continued... などと書いてある例をたまに見かけるが、これは「(次ページへ)続く」という意味ではなく、おもに連続物のテレビドラマや雑誌の連載記事などで使う「(次回に)続く」という意味の続き表示である。「次ページへ続く」は正確には continued to the next page となるが [55]、普通はこれを continued または cont’d と表記する。続きページ表記の記載例は以下のとおりであるが、各ページにページ番号が明記されていれば、わざわざこのように書く必要はない。

  [55] ただし、あるページの記述が途中からほかのページ(たとえば5ページ目)に飛んで記載されているような場合はcontinued on page 5(p.5に続く)となる。
 

 Figure 120: 続きページ表記の例 (cont’d...)

  なお、続きページ表記記号として P.T.O. という略号を使うことがあるが、これは Please Turn Over(裏面参照)という意味であって、2ページ目が別紙になっている場合には使えない。また、次の例 (Figure 121) のように次ページの最初の語を前ページ末尾右端に記載する方法もある。これを「キャッチワード (catchword)」方式と呼び、これによって次のページに移る際の文章の流れと意味のつながりを明示する。この方法は18世紀ごろまでの出版物にさかんに使われていたようであるが、現在ではほとんど見られない。
 

 Figure 121: キャッチワード (catchword) 方式の例

   なお、キャッチワード(日本語では「欄外見出し語」と呼ばれる)を記入する際、エリプシスあるいはスラッシュを加えて ...page または /page のように表記することもある。 

2.9.17  レターが 2ページ以上にわたる場合のページ分けの方法
 レターが数ページにわたる場合、最終ページが結尾敬辞や署名欄だけにならないように本文の配分を調整する必要がある。以下に示す例では1ページ目の最終行で本文が終わっているために、2ページ目が second-page headingsと結尾敬辞および署名欄だけになっている。このような書き方は避けるべきである。
 

 Figure 122: ページ分けの悪例

  このような場合には、以下に示すように1ページ目の最終2行ないし3行分を次のページに移し、これにともなって1ページ目の「前付け」部分、および2ページ目の「後付け」部分の各要素間のスペースをそれぞれ1-2行ずつ広げるなどして、各ページのバランスを整える。
 

 Figure 123: 正しいページ分けのしかた

  このように、原則としてレターの最終ページには少なくとも 2行、できれば 3行分の本文を置くようにする。
 

 


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